カラビニエ Les Carabiniers(1963)


製作:フランス・イタリア
監督:Jean-Luc Godard
出演:
Ulysse: Marino Masé
Michel Ange: Albert Juross
Vénus: Geneviève Galéa
Cléopâtre: Catherine Ribeiro
時間:78分

ユリシーズに大天使ミカエルにクレオパトラに女神ヴィーナス!
「絵葉書」というアイテムに印象を受ける。今でも小洒落た女子は小洒落たポストカードなんか集めて飾ったりするけれど、あの小さな紙片にはどうにも所有欲をそそるところがある。そしてその所有欲を、滑稽なほど抽象化・戯画化して描いてる。
4人が住んでいるのは、どうやら「誰もいない」土地らしいのだけど、彼らにまつわる全てが嘘くさい。誰がどういう関係かも入り乱れた、疑似家族のような関係性。粗末すぎる小屋のなかで、戦争の終わりもわからないとかいいながらマリクレール読んでるんだもん!そいで、やたらくるくる回ったり飛び跳ねたりする。王からの親書に応じて戦争に出た二人の男たちは、思うままに強奪したり暴虐を尽くすのだけど、そこには重みが全くない。それは技術的にいえば、異様に平板な俳優の演技や不自然なカットのつなぎ、唐突に挿入されるシーンによる虚構感なんだけど、ドラマ的にはタブーの意識や、罪悪感が欠如しているからだと感じた。戦争に言って、人を殺したり、物を奪っていいのだといわれたので、その通りにした。けれどそもそもの彼らの荒野での暮らしに、何か抑圧があるようには感じられない。だからこそ欲望の解放も、気の抜けたような効果しか発揮しない。
音と映像に、時折はっとさせられた。銃兵がゲリラ兵の帽子をとると、少女の金髪が零れ落ちる。映像に沿うた音楽が流れたかと思えば唐突に途切れ、銃声が響く。そして最も場違いなメロディが聞こえる。全てがどうにも異化的な効果に満ち満ちている。

カラビニエ [DVD]

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